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犬が吐く!犬の嘔吐・吐出の原因や対処法は?吐いたものから考えられる病気を獣医師が丁寧に解説。


犬が吐いて驚いた経験のある方は多いかと思います。

吐く原因として病的なものもあれば、生理的なものもあります。

病院に連れて行ってあげるべきかご自宅では判断できないことも多いので、この記事が判断の一助になれれば幸いです。

獣医師 阿部

犬が吐く原因は?

犬は体の構造上、人間よりも嘔吐しやすい動物

犬の体の構造は四足歩行をするために、体の軸が地面と平行です。
一方、人間の体軸は地面に垂直なため、吐く場合には重力と逆方向の力が必要になるため、吐きにくい構造をしています。犬が吐く場合には重力にさからう力があまり必要ないため、人間よりも吐きやすいです。

犬が吐く原因

吐く原因は生理的なものから病的なものまで多岐にわたります。

例えば、生理的な原因

・フードを勢いよく食べた。
・一度に大量のフードや水を摂取した。
・空腹の時間が長くなってしまった。

病的な原因

・食道炎や巨大食道症
・心血管系の異常
・胃腸炎
・膵炎
・おもちゃなどの異物による消化管閉塞
・肝臓や腎臓など消化器以外の異常
・腫瘍
・ストレス

これら以外にも「吐く」とうい症状の原因は様々です。生理的な原因であれば緊急性はありませんが、病気による症状であれば早く動物病院に受診した方が良いです。

同じ吐くでも違う「嘔吐(おうと)」と「吐出(としゅつ)」

口からフードなどが排出する行動には種類があり「嘔吐」と「吐出」があります。

悪心(※1)による流涎(りゅうぜん/よだれが出ること)や、発咳(はつがい/咳が出る症状のこと)による喀痰(かくたん/痰が出ること)も口からものを排出する行動ですが、今回は消化器に関与しやすい嘔吐と吐出についてまとめさせていただきます。

(※1 )悪心:口の周りを頻繁に舐める、繰り返し飲み込むような行動は、気持ちが悪いときに出やすい悪心の徴候です。

まず、「嘔吐」はフードや水分を、胃や十二指腸から能動的に排出する行動です。
次に、「吐出」はフードや水分が、胃に入る前に受動的に排出する行動です。

それぞれの特徴は表をご覧ください。

        嘔吐吐出
行動能動的受動的
食後に吐くまでの時間様々すぐに吐くことが多いが様々
吐く前の症状悪心・流涎悪心(ないことも多い)
吐き方腹部を強く動かして吐く腹部の運動はあまりなく、 首を伸ばし、頭を下げて吐く
吐物の消化具合様々未消化であることが多い

犬のストレスと吐く行動の関連性

胃腸は自律神経という神経の支配を受けており、自律神経が正常に働くことで、胃腸がスムーズに動いてくれます。ストレスは自律神経の働きを乱す要因であり、ストレスにより胃腸の動きに異常が生じると、結果として嘔吐することがあります。

その他にも、ストレスが直接的に嘔吐中枢を刺激することで吐いてしまう可能性があります。ストレスによる嘔吐以外の症状として、下痢や食欲不振などの消化器症状が出ることがあります。

吐いたときに飼い主がとるべき行動

犬が吐いた!どうすればいい?基本的な対処法を解説

犬が吐いた場合には、緊急性が非常に高いか判断するために、呼吸や意識に異常がないか確認してください。
嘔吐であれば可能性は低いですが、吐いたことにより空気の通り道である気管が詰まってしまうと、急激に体調が悪化します。呼吸や意識の様子に異常があるときには、すぐに処置が必要です。

また、嘔吐以外にも下痢、元気がないなど他の症状がある場合も、早めに動物病院の受診をお勧めします。

嘔吐した後に元気があり、他の症状もなく、その後の食欲も問題ない場合は緊急性が高くないものが多いです。ただし、数日おきに嘔吐するなどの異常があれば受診をお勧めします。

犬が吐いたときのチェックポイント

犬が吐いた時にまずは確認していただきたい項目がいくつかあります。

(1)呼吸がしづらそうじゃないか、意識がはっきりしているか?
(2)吐く前に何か食べてしまっていないか?(食べ物・食べ物以外も含め)
(3)吐いているのはいつから、何回、どんな物か?また、食後どれくらいで吐いたか?
(4)お腹が大きく動いて吐いているか?
(5)食欲の低下や元気がない、下痢、腹痛などのその他の症状があるか?

上記のチェックポイントは犬が吐いた時に重要です。

特に、1・2に異常がある場合は緊急性がかなり高い可能性があります。
また、何回も吐いているや他のチェックポイントに該当する症状がある場合も、早急に動物病院に受診してください。

※上記のチェックポイントは獣医師が知りたいけど、ご家族でないと分かりにくい項目も含まれています。特に1・2の異常は早急に対処しないと亡くなってしまう可能性もあります。1・2の異常がない場合でも同様に受診するようお願いします。

受診時に獣医師へ伝えたい情報

動物病院では上記のチェックポイントに加え、今までどんな病気に罹ったことがあるか(既往歴)や、直近で何かしらの検査をしているようであればその結果を教えていただけると、吐いている原因の特定の助けになります。

また、おもちゃや薬などを誤食した場合には、残っている部品、何の薬かわかるものなどをご持参いただけると非常に助かります。

犬が吐いても様子を見ていい場合(自宅で様子見をしてよい犬の嘔吐の例)

吐いた場合、基本的には受診することをお勧めします。
ただし、早食いをして吐いたけど、いつもと何ら変わらない様子であるなど、因果関係が明確かつ、緊急性が低く、吐いた後の体調も普段と変わらない場合は様子を見ていただくことも可能です。

吐きたそうにしていて吐けない場合

吐きたそうにしているのに吐けない場合も、早急に受診をお願いいたします。
疑う病気として胃拡張捻転症候群、消化管閉塞や、その他にも何度も吐いているせいで吐けるものがないような状態の可能性があります。

胃拡張捻転症候群や消化管閉塞は緊急の手術が必要になる可能性があります。また、何度も吐いている場合には脱水も併発する可能性があるため、気が付いたら早く動物病院に受診してください。

犬が吐出したものや色によって原因や危険度

透明や白い液体や泡を吐いた時

透明~白い液体や泡は、唾液や胃液、飲んだ水が排出されている状態です。
吐いた後に元気や食欲が問題ない場合には、緊急性の低いストレスや空腹による嘔吐を疑います。
何度も吐く、元気がない、下痢など他の症状もある場合には、胃拡張捻転症候群や腸閉塞、急性膵炎などのような緊急性が高い病気が含まれるため、病院に受診してください。

黄色い液体を吐いた

黄色や緑色の液体は、胃の中に流入した胆汁の色です。
十二指腸に分泌される胆汁が、胃に流入し嘔吐を誘発してしまうものを「胆汁嘔吐症候群」と言います。空腹時間が長いと生じることが知られており、食餌の間隔が長くなりやすい朝方や、食餌前に嘔吐することが多いです。
元気や食欲がある場合が多く、その他の異常がなければ緊急性は低いです。
ただし元気、食欲がない場合には早く受診をした方がいいです。

赤色の液体を吐いた時

赤色やピンク色の液体は、口腔内・食道・胃から血液が混入していることを疑います。
歯肉炎、食道炎、胃潰瘍や腫瘍などを疑うため、早急な受診をお勧めします。

茶色のものを吐いた時

茶色の液体は、消化されてドロドロになったフードや、こげ茶色であれば消化器の出血を疑います。
特に出血の場合には消化管潰瘍などの病気を疑うため、早急な受診をお勧めします。

消化されていないフードや草を吐いた

消化されていないフードを吐いた場合には、食道の異常による吐出や、胃に入ってすぐに嘔吐した、胃腸の動きが悪くなっていることを疑います。
吐出は誤嚥※2を起こしやすく危険ですし、胃腸の動きが悪くなっているときは、治療が必要なケースが多いので、早く受診した方がいいです。
※2誤嚥とは、本来口から食道へと入るものが気管へと入ってしまうことを指します。

毛玉を吐いた時

毛玉を吐いた場合には、換毛期の毛や、ほこりを飲み込んでいる可能性が高いです。
元気や食欲がしっかりある場合は、体調に異変がないか様子を見ていただいて大丈夫です。
元気、食欲がない場合は、毛球症などの異常があるかもしれないので受診してください。

ヒモ類や、おもちゃ、キャップなど、食べ物ではない異物

食べ物ではない異物を吐いた、または食べた場合には、消化管閉塞・穿孔(せんこう/内臓に穴が開くこと)のリスクがあるので早急に受診してください。
おもちゃなどの残骸があれば、ご持参いただけると治療方針を決める一助になります。
食べたものを吐かせる処置は、食べたものが鋭利でなく、胃の中にある場合に行うことができます。それができない場合には、麻酔をして内視鏡や、開腹手術が必要になることもあります。

その他

その他にも、吐物に寄生虫がいる場合などがあります。
分からないものを吐いた場合は、受診をお勧めします。

犬の嘔吐を引き起こす病気に注意!

消化器系の病気による嘔吐

まず消化器系とは、「消化管である口から肛門までの器官と、消化管以外の消化を助ける器官」のことで、具体的には前者が口・食道・胃・小腸・大腸・肛門、後者が肝臓・胆嚢・膵臓(・脾臓)です。

消化管が原因の嘔吐で考えられる疾患は、

・炎症(胃炎、炎症性腸疾患、大腸炎)
・閉塞などの通過障害(異物、狭窄、胃拡張捻転症候群、運動性低下、イレウス、重積、便秘)
・腫瘍
・食事による影響(アレルギー、不耐症、不適切な食事の摂取)など

消化器以外の病気による嘔吐

・肝胆道系疾患(肝機能障害、肝炎、胆嚢炎、胆管炎、胆道の閉塞)
・膵臓(膵炎)
・腹膜炎や各臓器の腫瘍など

感染症による嘔吐

感染症にはウイルス、細菌、真菌、寄生虫の病原体があります。

・ウイルス(犬パルボウイルス、犬ジステンパーウイルス、犬腸コロナウイルスなど)
・細菌(ウェルシュ菌、カンピロバクター、サルモネラなど)
・真菌(稀に酵母様真菌)
・寄生虫(クリプトスポリジウム、ジアルジア、回虫など)

中毒による嘔吐

中毒による嘔吐には様々なものがあります。犬には毒になり得る食べ物、嗜好品、植物、人用の薬など様々です。また、犬に対して治療目的で使用している薬の副作用で、食欲不振や嘔吐、下痢などの消化器症状が出てしまうこともあります。

今回はその中の一部を例に挙げていきます。

・人の食べ物(チョコレート、キシリトール、ブドウなど)
・タバコ、エチレングリコール(不凍液)、殺虫剤・殺鼠剤など
・ユリ科植物、観葉植物など
・湿布
・抗がん剤
・飲み薬全般(抗生剤、消炎鎮痛剤など)

その他

その他の原因として考慮しなければならないものとして、

・代謝性疾患(尿毒症、電解質異常、酸塩基平衡異常)
・内分泌疾患(副腎皮質機能低下症、甲状腺機能亢進症、糖尿病性ケトアシドーシス)
・中枢神経疾患(腫瘍、髄膜炎、頭蓋内圧上昇)
・上記以外(乗り物酔い、過食、手術後、敗血症、子宮蓄膿症)

などを疑い検査や治療を行います。

犬の吐いた場合の疑問質問に獣医師が回答!Q&A

Q犬が何度か吐いたけど元気な場合はどうしたらいいですか?

A:可能であれば受診していただいた方が良いです。
ただし原因が早食いの場合や、数回だけ透明な液体や泡を吐いたが、その後に元気や食欲、排泄物に異常がない場合は、緊急性が低いことが多く、様子を見ていただくのも可能です。
1日に1回しか吐かないけど数日おきに吐いている、下痢しているなど他の症状がある場合には受診した方が良いです。

Q:犬がストレスで吐くことはありますか?

A:あります。
詳しくは「犬にストレスと吐く行動の関連性」の項目をご覧ください。

Q:食後6時間後に未消化のドッグフードを吐くのはなぜですか?

A:食道が広がってしまう巨大食道症という疾患や、様々な原因から消化管の運動性が低下した影響で未消化なフードを吐く可能性があります。

Q:犬が嘔吐した後、何時間後にご飯を与えたらいいですか?

A:吐き気が続いている場合は、そもそもフードを受け付けてくれないことが多いですし、無理にフードなどをあげても吐いてしまいメリットがありません。吐き気が続いている場合には、治療の必要があるため受診し、獣医師と相談してほしいです。
食欲などを確認する場合は、2~3時間は間を空けてから水分や、少量のフード、おやつを与えてみてください。

Q:犬が吐いたあと散歩してもいいですか?

A:元気や食欲がない場合は散歩を控えて、安静にしてください。
元気や食欲に影響が出ていない場合も、運動により消化管の運動が活発になることにより悪化することがあります。安静にしていただいた方が無難ですが、とっても元気があり、もし散歩をする場合は、普段よりも短時間にするなどしてください。

まとめ(予防策と対処法)

犬が吐いた場合、緊急性の有無を判断することは簡単ではないので、基本的には動物病院に受診していただいた方が良いと思います。

緊急性が低い胆汁嘔吐症候群の場合には、空腹時間が長いことが原因にもなるので、1回の給餌量を減らし、回数を増やすなども効果があります。

その他にも異物は、人が管理しきれていないことで起こってしまうものが主です。犬がアクセスできる場所に、ご自身の薬や食べ物などを置かないように心がけることが重要です。

他には急性膵炎の原因の1つに、脂肪分が多い食餌があります。

当院でも、前日に味付けをしていないステーキをあげてから元気も食欲もなく、吐いて下痢もしているといった症例を診察することもあります。

人が食べているものは、犬からすれば家族が食べている御馳走で羨ましく思うこともあると思います。本来はあげない方が良いものでも、かわいい家族が欲しがっているからついあげてしまう気持ちもわかりますが、その後に大きな後悔をしないためにも、ちゃんと犬が食べるものをあげることが良いと思います。

東中野アック動物医療センター院長 阿部 透
東中野アック動物医療センター院長
阿部 透
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当院では犬・猫以外のエキゾチックアニマルの診療も行っております。
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治療や飼育方法など気になることがあれば気軽にご相談いただけると、我々も皆様がどんなことに対して気になっているか共有できるので、ぜひご相談ください。

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