猫にとってアレルギーは、とても身近なトラブルのひとつ。
皮膚のかゆみや嘔吐、下痢など、さまざまな症状が現れるため、気づかないうちに悪化してしまうケースも少なくありません。
さらに近年では、「飼い主さん自身が猫アレルギーを発症した」というご相談も増えています。
猫も人も、できるだけ快適に暮らせるようにするには、正しい知識と日々のケアが欠かせません。
この記事では、猫のアレルギーの原因や治療法、予防方法にくわえ、飼い主の猫アレルギーへの対処法や注意点もあわせて解説します。
「うちの子ももしかして…?」と感じたら、ぜひ最後までお読みください。
獣医師 阿部透
猫が発症するアレルギーとは

アレルギーとは体を守る免疫反応が、「アレルゲン」と呼ばれる特定の物質に対して過剰に反応してしまう状態を指します。
アレルゲンとは、アレルギーを引き起こす物質のことを言います。
ハウスダスト・花粉・カビ・ダニを含む寄生虫・食物など、日常的に存在する様々なものがアレルゲンとなり得ます。ただし、アレルギー性疾患を発症していない人や動物にとっては、それらのものは毒性があるわけではありません。
そのため原因を特定するのが難しい、もしくは完全に除去するのが難しいケースもみられます。そのため、「完治させる」のではなく「再発させない」ことを目標に、長期的な取り組みが必要になることも。
それでは次に猫に起きやすいアレルギーの種類と、それぞれの原因について詳しくみていきましょう。
猫のアレルギーの種類と原因
猫のアレルギーにはいくつかのタイプがあります。
①ノミアレルギー性皮膚炎
ノミに刺されることで唾液に対するアレルギー反応を引き起こし、激しいかゆみや脱毛、皮膚の赤みが起きます。ごく少数のノミでも発症することがあるため、徹底したノミ対策が重要です。
②食物アレルギー
フードに含まれる特定のタンパク質や添加物に反応してかゆみや下痢、嘔吐を起こすことがあります。食物アレルギーは原因の特定が難しく、特に長期的な取り組みが必要です。
③アトピー性皮膚症候群(FASS:Feline Atopic Skin Syndrome)
ノミや食物以外で起きる皮膚炎をアトピー性皮膚症候群と呼びます。
ノミや食物が関連しない要因すべてが当てはまるので、原因の特定が非常に難しいのが特徴です。
④猫喘息
ダニや花粉、食物、タバコの煙、香水などが刺激因子となり、発咳や喘鳴、くしゃみ、頻呼吸などを引き起こします。重症例では呼吸困難により亡くなる可能性もあるので注意が必要です。
猫のアレルギーの症状

猫のアレルギー症状としてよくみられるのは、以下のようなものです。
- 皮膚のかゆみ
- 湿疹
- 脱毛や出血
- 皮膚炎
- 下痢
- 嘔吐
- 食欲不振
- 元気がなくなる
複数の症状があらわれたり、皮膚をかゆがって搔きこわしてしまい、細菌感染を起こすケースも少なくありません。
猫は毛づくろいをよくする動物ですが、同じ場所ばかり執拗に舐めていないか、かゆがってそわそわしていないかなど、注意深く様子を観察することも大切です。
また、咳が続く、呼吸が速い・苦しそうといった呼吸器の症状がみられる場合も、アレルギー性の病気が隠れていることがあります。皮膚の症状とあわせて気になる変化があれば、早めに受診を検討しましょう。
画像で見る猫のアレルギー症状
頭頚部掻把痕:耳の前部を掻きこわしてしまっている状態

過剰グルーミングによる脱毛

アレルギー発症リスクの高い猫種
猫のアレルギーは、基本的にはどの猫にも起こり得る病気です。
これまでの研究や症例報告から、猫種によってアレルギー疾患が起こりやすい可能性が示唆されてはいるものの、データ量がまだ少なく、明確に「この猫種はリスクが高い」と言い切れる段階ではありません。
実際の診療でも、純血種・雑種(いわゆるミックス)を問わず、さまざまな猫でアレルギーがみられます。猫種よりも、「かゆみが何週間も続いている」「薬を塗ってもすぐに再発する」といった症状の経過を受診の目安にしていただくことが大切です。
また、ペルシャやヒマラヤンのような長毛種では、毛量が多く通気性が悪くなりやすいため、皮膚が蒸れてかゆみや皮膚炎を起こしやすい傾向があります。一方、スフィンクスのように被毛がほとんどない猫種では、皮膚が外気や刺激に直接さらされるため、乾燥や刺激によるトラブルが起きやすくなります。
こうした猫種による傾向は、遺伝的な要因や体質、皮膚の構造などが関係していると考えられていますが、アレルギー発症との関連についてはまだ十分に解明されていません。飼育環境や食生活、免疫状態なども複雑に関わるため、いずれの猫種や雑種であっても、皮膚や行動の変化に気づいたら早めの相談をおすすめします。
ノミアレルギー性皮膚炎

ノミアレルギー性皮膚炎の原因や症状、治療方法にはどのようなものがあるのでしょうか?
ここでは、それぞれについて詳しく解説しています。
ノミアレルギー性皮膚炎とは?原因は?
ノミアレルギー性皮膚炎は、ノミの唾液がアレルゲンとなって発症する皮膚疾患です。1匹のノミに咬まれただけで体内の免疫が過剰に反応して、発症することも珍しくありません。
近年は室内の暖房環境により通年で発生が報告されています。冬季でも油断せず年間を通じた駆除が必要です。【参考:PetMD解説】
人間の出入りにくっついて家に持ち込まれることもあるので、室内飼いの猫でもノミに咬まれるリスクはあると考えたほうが良いでしょう。
ノミアレルギー性皮膚炎の症状は?
ノミアレルギーの症状として、以下のようなものが挙げられます。
・強いかゆみ
・小さな赤いぶつぶつ(粟粒性皮膚炎)
・皮膚の赤みやしこり(好酸球性肉芽腫群)
・脱毛
ノミに咬まれると強いかゆみを生じるので、掻きこわした部位が傷になって細菌感染を引き起こすこともあります。
ノミアレルギー性皮膚炎の検査診断、治療は?
まず、ノミの有無を確認することが大切です。
首から背中の毛をかきわけて、ノミやノミの糞がないか探してみましょう。本体が見つけられなくても、猫の身体やベッド、ソファなどに黒い粒がぱらぱらと落ちている場合は大抵ノミがいます。黒い粒を湿らせたティッシュに取ると崩れて赤褐色に変化するので、比較的容易に見分けられるでしょう。
ノミアレルギー皮膚炎の治療は、ノミの徹底駆除とアレルギー症状に対する治療を並行して進めていきます。
猫の身体にノミ駆除薬を投与するのに合わせて、住居全体のノミ駆除も徹底して行いましょう。特に多頭飼いの場合は、同じタイミングでノミ駆除薬を投与することが大切です。
かゆみや脱毛が起きている場合は、薬や保湿で皮膚の再生を促します。
ノミアレルギー性皮膚炎の予防方法は?
ノミアレルギー性皮膚炎は、一度発症するとアレルギー体質そのものを完全に治してしまうことは難しく、少数のノミに刺されただけでも強い症状が出てしまいます。
そのため、「ノミに刺されないようにする予防」がとても重要です。ノミそのものは同居猫や人の衣類などを介して家の中に広がりやすいため、以下のような予防策を継続しましょう。
- 室内飼いを徹底する
- 人間が外からノミを持ち込まないよう注意する
- カーペットや猫ベッドなどをこまめに清掃・洗濯する
- 獣医師の指示のもと、すべての同居猫に定期的にノミ駆除薬を投与する
食物アレルギー

猫の食物アレルギーの原因や症状、治療方法にはどのようなものがあるのでしょうか?
ここでは、それぞれについて詳しく解説しています。
食物アレルギーとは?原因は?
猫の食物アレルギーは、特定の食材や成分に対してアレルギー反応を起こすことを指します。アレルゲンとなるのは牛肉や鶏肉、乳製品、卵、穀類など一般的なフードに含まれる成分や、添加物が大半です。
初めて食べたフードや食材だけでなく、今まで食べていたフードでもアレルギーを発症することがあります。
猫の食物アレルギーについては解明されていない部分が多く、アレルギーの原因物質を突き止められないケースも少なくありません。「どのような食物でもアレルギーを引き起こす可能性がある」と認識しておくことが大切です。
食物アレルギーの症状は?
食物アレルギーの症状として、以下のようなものが挙げられます。
- 皮膚のかゆみ
- 脱毛
- 小さな赤いぶつぶつ(粟粒性皮膚炎)
- 下痢
- 嘔吐
特に、顔や首まわり、おなかの毛が薄い部分(下腹部)などに症状が出やすいとされています。
また、季節に関係なく一年を通して症状がみられることが多いのも、食物アレルギーの特徴といえるでしょう。
食物アレルギーの検査診断、治療は?
現時点では、猫の食物アレルギーだけを正確に診断する方法は確立されていません。
そのため、ノミや他のアレルギー、疾患などの可能性を排除していくことで「食物アレルギーだろう」と判断することになります。
治療法としては低刺激食や6~8週間の除去食後、再度元の食事を与えて症状再燃を確認するリチャレンジを含め計12週間程度を要しますが、かなり長期的な取り組みが必要なうえ、アレルゲンが特定できないケースも少なくありません。【参考:AAHA 2023】
そのため投薬等で症状を緩和しつつ、アレルギーが出ないフードを探すという方法をとることもあります。
食物アレルギーの予防方法は?
食物アレルギーは、一度発症すると同じアレルゲンを食べるたびに症状をくり返しやすい病気です。原因となる食材(アレルゲン)が分かっている場合は、その成分を含まないフードを続けることが最大の予防になります。
一方で、多くの場合はアレルゲンの特定が難しいため、自己判断で市販のフードを選ぶのではなく、獣医師と相談しながらフードを決めていくことが大切です。
「何となく良さそうだから」とグレインフリーや添加物不使用のフードに変えるだけでは、原因の特定やコントロールが難しい場合もあります。気になる症状があるときは、まずはフードの変更前に一度ご相談ください。
アトピー性皮膚症候群

猫のアトピー性皮膚症候群の原因や症状、治療方法にはどのようなものがあるのでしょうか?
ここでは、それぞれについて詳しく解説しています。
アトピー性皮膚症候群とは?原因は?
アトピー性皮膚症候群(FASS)は、猫にみられる代表的なアレルギー性皮膚疾患のひとつです。
かつては「猫アトピー」などと呼ばれたり、「非ノミ・非食物誘発性過敏性皮膚炎(NFNFIFHD)」 と表現されていた時期もありましたが、現在は2023年のAAHAガイドラインなどで 「猫アトピー性皮膚症候群(FASS)」という呼び方に整理されつつあります。
ノミアレルギーや食物アレルギーが除外されたうえで、ダニ・花粉・カビ・ハウスダストなどの環境中の抗原(環境アレルゲン) が関与して起こるアレルギー性皮膚炎を指します。
ノミや食物以外のアレルギー全般を指すため原因は非常に幅広く、花粉やホコリ(ハウスダスト)、真菌(カビの一種)など日常生活でありふれた物質がアレルゲンになることも珍しくありません。他には温度差やストレスなどがきっかけになることも。
また、皮膚が本来持っているバリア機能が弱いアビシニアンやデボンレックスは、アトピー性皮膚症候群が起きやすい猫種といわれています。
アトピー性皮膚症候群の症状は?
アトピー性皮膚症候群の主な症状として、強いかゆみが挙げられます。
かゆみのために猫が過剰に毛づくろいを行うので、脱毛や出血が起きてしまうケースも多くみられます。
かゆみは耳の後ろや顎まわり、首などが多いですが、症状が進行すると好酸球性肉芽腫群と呼ばれるしこりやただれ、潰瘍ができることもあります。
アトピー性皮膚症候群の検査・診断・治療法
猫のアトピー性皮膚症候群炎には、現時点で「この検査をすれば確定する」という決定的な検査方法はありません。
そのため、まずはノミアレルギー性皮膚炎や食物アレルギー、細菌・真菌による皮膚炎など、他の原因となりうる病気を一つずつ除外しながら診断を進めていきます。
また、ICADA(国際動物アレルギー疾患委員会)のガイドラインでは、ノミアレルギーが十分に除外されているかどうかで診断基準が一部異なることが示されています。
本記事では、その中から代表的な臨床徴候を飼い主さん向けにわかりやすく整理した「目安」として10項目を紹介します。
これらのうち6つ以上に当てはまる場合、猫アトピー性皮膚症候群炎の可能性が高いと考えられますが、あくまでセルフチェック用の参考であり、最終的な診断は獣医師が総合的に行う必要があります。
アトピー性皮膚症候群を疑う10のチェックリスト
- 初期段階からかゆみがみられる
- 対称的な脱毛、頭部や首の引っかき傷、粟粒性皮膚炎、好酸球性肉芽腫群のうち2つ以上がある
- 体の2か所以上に病変が見られる
- 主な病変が粟粒性皮膚炎である
- 好酸球性皮膚炎や左右対称の脱毛、または頭・顔・口唇・耳・首まわりにびらんや潰瘍がある
- おしりや尻尾、後ろ足に左右非対称な脱毛がある
- お腹に左右対称の脱毛がある
- 前足にびらんや潰瘍がない
- 胸や脇の下に病変がない
- 結節(しこり)や腫瘍が見られない
治療の基本は「かゆみと炎症のコントロール」
アトピー性皮膚症候群(FASS)は再発しやすく、体質そのものを完全に治してしまうことは難しい病気です。そのため、かゆみと炎症をできるだけ抑え、猫が普段どおりの生活を送れるようにする「長期的なコントロール」が治療の柱になります。
まずは、ノミアレルギーや食物アレルギー、細菌・真菌による皮膚炎など、他の病気が隠れていないかを丁寧に除外していきます。そのうえで、症状の程度に応じて次のようなお薬を組み合わせて治療していきます。
- かゆみや炎症を抑える内服薬・外用薬(消炎剤・免疫抑制剤・抗掻痒薬など)
- 必要に応じて、抗ヒスタミン薬や必須脂肪酸製剤、マロピタントなどを併用することもあります
- 皮膚の赤みやジュクジュクがみられる場合は、細菌・真菌感染が起きていないか皮膚検査を行い、必要に応じて抗生物質や抗真菌薬で治療します
症状の強さや体質、生活環境によって、最適な治療の組み合わせは猫それぞれで異なります。
「かゆみが続いている」「同じ症状をくり返している」と感じたら、早めに獣医師にご相談ください。
アトピー性皮膚症候群の予防方法は?
猫のアトピー性皮膚症候群は症状が治まっても再発することが多く、完全に予防するのが難しい疾患です。日頃から生活空間をこまめに清掃し、アレルゲンになりやすいハウスダストやカビを減ららすなど、再発しづらい生活環境を整えることが大切です。
また、いつもより毛づくろいが長かったり、皮膚を引っかいている、皮膚の赤み・かさぶたを見つけたら、早急に獣医師に相談しましょう。
疥癬(かいせん)

猫の疥癬とは「ヒゼンダニ」による感染症です。
原因や症状、治療方法にはどのようなものがあるのでしょうか?ここでは、それぞれについて詳しく解説しています。
疥癬(かいせん)とは?原因は?
疥癬(かいせん)は、主にヒゼンダニが猫の皮膚に寄生することで発症する皮膚病です。ここでは、とくに、猫疥癬(ネコショウコウヒゼンダニによるもの)について説明します。
皮膚で繁殖したヒゼンダニが角質層にトンネルを掘って侵入し、その中で産卵や排泄を行います。
ヒゼンダニ本体や糞に対してアレルギー反応が起こることで、激しいかゆみや皮膚炎を引き起こしてしまいます。
ヒゼンダニは感染力が強く、外で暮らす猫から、玄関先や人の衣類・荷物などを介して室内飼いの猫にうつってしまうケースも少なくありません。
疥癬(かいせん)の症状は?
疥癬は激しいかゆみが特徴です。かゆい部分を激しく引っかくので、皮膚が傷ついたりその部分が脱毛してしまうことも。
免疫力の低い子猫や老猫、体力が落ちている猫で重度の感染を引き起こすと、食欲不振やぐったりするなどの症状が起きることもあるため、早めの対処が必要です。
疥癬(かいせん)の検査診断、治療は?
皮膚の表面をこすって顕微鏡でダニを確認する「皮膚掻爬(そうは)検査」やテープを使って皮膚片を集めて検査する「セロハンテープ法」が一般的です。
ただし、ヒゼンダニは皮膚の奥深くに潜っており、検査で発見されないケースも珍しくありません。診断で確定しなかった場合でも、症状などから総合的に判断して疥癬の治療を始めることもあります。
治療は駆虫薬を数回に分けて投与するとともに、抗炎症薬や抗生剤を併用してかゆみや皮膚炎を緩和します。生活環境の見直しや、猫ベッド・カーペット・ソファなどのこまめな掃除や洗濯も、再感染を防ぐうえで重要です。
同居猫がいる場合は、症状がない子も含めて同時に治療をスタートし、お互いにうつし合ってしまうサイクルを断つようにします。
また、耳疥癬など犬にも感染するタイプの疥癬が確認された場合には、同居犬も含めて治療を行います。
疥癬は人間にうつる?
猫に寄生するヒゼンダニ(ネコショウセンコウヒゼンダニ)は、まれではありますが人間にうつることがあります。人に寄生した場合、皮膚の中で増え続けることはないとされていますが、一時的に強いかゆみや赤いポツポツ(丘疹)などの症状を起こすことがあります。
【参考:Therapeutic management of notoedric mange 2024 】
猫と接したあとにご家族にかゆみや発疹が出た場合は、「動物病院で猫が疥癬を疑われている(診断されている)こと」を伝えたうえで、早めに皮膚科など人の病院を受診してください。
あわせて、猫に触れたあとは必ず手を洗う、ソファやマットレスなどの布製品をこまめに掃除・洗濯するなど、生活環境を清潔に保つことも大切です。
疥癬(かいせん)の予防方法は?
疥癬の予防策として最も大切なことは、感染源となる外猫や野生動物との接触を避け、なおかつノミ・ダニの予防薬を使用することです。
完全室内飼いの徹底、犬と同居している場合は野生動物との接触に注意するなどの対策で感染リスクを大幅に下げることができます。
定期的な健康診断や皮膚チェック、ノミダニの予防・駆除剤の投与で予防することも重要です。
猫がしきりに身体を搔いている、脱毛が増えた、かさぶたが目立つといった症状があれば早めに獣医師に相談することをおすすめします。
飼い主さんの「猫アレルギー」について

猫のアレルギーというと「猫自身の体質」をイメージしがちですが、実際には飼い主さん側が猫アレルギーを発症するケースも少なくありません。
ここからは、人の猫アレルギーについての一般的な情報をお伝えします。
※具体的な診断や治療は、必ず人の医療機関(医師)にご相談ください。当院では人の診断・治療は行えません。
猫アレルギーの主なサインと原因
主な症状の例
- くしゃみ・鼻水・鼻づまり
- 目のかゆみ・充血
- 皮膚のかゆみやじんましん
- 喘鳴(ゼーゼーした呼吸)や、息苦しさ など
これらの症状が「猫と一緒にいるときに強くなる」「猫と離れると楽になる」といった場合、猫アレルギーの可能性があります。
原因物質(アレルゲン)
猫アレルギーの大きな原因とされているのが、猫の唾液や皮脂腺から分泌されるたんぱく質「Fel d 1」 です。このFel d 1は、猫の毛づくろいなどを通じてフケ(英語ではdanderやdandruffと呼ばれる細かい皮膚片)や被毛に付着し、空気中を漂って人の鼻や目・気道の粘膜に付着することでアレルギー反応を引き起こします。
猫アレルギーが疑われるときは
猫と一緒に過ごしたあとに上記のような症状が出る場合は、まず人の医療機関(アレルギー科・呼吸器内科・皮膚科など)に相談してください。
検査や詳しい治療内容については、獣医師ではなく医師が診察のうえ判断する必要があります。
「猫と暮らしている」「猫と接触したあとに症状が出る」といった情報を、受診時に伝えていただくと診断の助けになります。
自宅でできる猫アレルギーの環境対策
医師の指示に従ったうえで、ご自宅の環境を整えることで症状が和らぐ場合もあります。
こまめな掃除と換気
床やカーペット、猫がよく乗る場所を中心に、掃除機や水拭きを定期的に行いましょう。空気清浄機の使用も、空気中のアレルゲン量を減らす一助になります。
猫のケア
猫がストレスにならない範囲で、シャンプーや濡れタオルで被毛を拭くことで、被毛やフケについたFel d 1が減少する可能性が報告されています。
Fel d 1 対策フードの活用
一部のフードには、唾液中のFel d 1を中和してアレルゲン量を減らすことを目指した製品もあります。すべての方に効果があるわけではありませんが、選択肢の一つとして獣医師にご相談ください。
寝室は“猫立ち入り禁止”にする
就寝中は鼻や気道の粘膜が敏感になりやすく、アレルギー症状が強く出ることがあります。寝室だけでも猫と生活スペースを分けると、負担を軽減できる場合があります。
猫を迎える前に気をつけたいこと
れから猫を迎える場合、家族のだれかに猫アレルギーがある・心配があるときは、事前に人の医療機関で相談しておくと安心です。
- 必要に応じて、医師と相談のうえでアレルギー検査を受ける
- 事前に猫カフェや保護猫施設などで短時間ふれあい、体調の変化を見る
- 十分な換気ができるか、空気清浄機など環境面で工夫できるかを確認する
同じ「猫アレルギー」といっても、症状の程度や生活への影響は人それぞれです。
飼い主さんが無理をして悪化させてしまう前に、医師・獣医師の両方と相談しながら、「人も猫も無理のない暮らし方」を一緒に考えていければと思います。
猫アレルギーのよくある質問【Q&A】

Q1. 猫のアレルギーは突然出ることがありますか?
A. はい、成猫になってから急に症状が出ることもあります。
猫のアレルギーは、体質や年齢にかかわらず、ある日突然かゆみや脱毛などの症状として現れることがあります。特に、環境の変化(引っ越し・フード変更・同居動物の追加など)をきっかけに悪化するケースもあります。「急にかゆがるようになった」「同じ場所をずっと舐めている」など気になる様子があれば、自己判断で様子を見るより、早めに動物病院でご相談ください。
Q2. 猫のアレルギーは治りますか?
A. 体質そのものを「完全に治す」ことは難しいですが、症状をコントロールしてうまく付き合っていくことはできます。ノミアレルギー、食物アレルギー、アトピー性皮膚症候群など、原因によって治療方針は異なりますが、消炎剤や抗アレルギー薬、外用薬、食事管理などを組み合わせて、かゆみや皮膚炎ができるだけ出ない状態を目指します。
症状の程度や生活環境によって最適な治療は猫ごとに違いますので、自己判断で市販薬を使うのではなく、まずは動物病院でご相談ください。
Q3. 猫の毛を短くすればアレルギーは減りますか?
A. 毛の長さはあまり関係ありません。
猫アレルギーの原因となるたんぱく質(Fel d 1など)は唾液や皮脂に含まれるため、毛を短くしても根本的な対策にはなりません。
Q4. 猫のアレルギー検査は動物病院で受けられますか?
A. はい、血液検査や除去食試験などを行うことで確認できます。
ノミ・食物・環境アレルゲンなど、さまざまな可能性を探っていく必要があります。疑わしい症状が続く場合は、早めに動物病院へご相談ください。
猫アレルギーのまとめ

猫のアレルギーは、皮膚のかゆみや脱毛、下痢・嘔吐、喘息など、さまざまな症状となって現れます。
一見すると「体質かな」「季節のせいかな」と見過ごされやすいのですが、放っておくと悪化したり、慢性化してしまうこともあります。
大切なのは、早めに症状に気づき、適切な診断と治療・ケアを行うことです。
フードの見直しや環境整備、内服薬・外用薬などを組み合わせることで、症状が落ち着き、普段どおりの生活を送れるようになる猫も少なくありません。
「最近かゆがり方がひどい」「同じ場所をずっと舐めている」「皮膚やお腹の調子が気になる」など、少しでも心配なサインがあれば、お気軽に当院までご相談ください。
猫が毎日をできるだけ快適に過ごせるよう、一緒に原因を探しながら、最適なケアや治療方法を考えていきましょう。
当院について

愛猫の「いつもと違う様子」に少しでも不安を感じたら、中野区の東中野アック動物医療センターへご相談ください。
当院は猫の病気に詳しい獣医師が在籍し、丁寧なカウンセリングと総合診療・専門医療を兼ね備えた体制で、飼い主さまと一緒に原因を探ります。
土日祝も診療対応、内視鏡などの高度検査も可能です。
中野区・杉並区・新宿区エリアからのアクセスも良好。
大切なご家族の健康を守るために、どうぞお気軽にご来院く
参考文献・出典 / References
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